「さすが百瀬さん。そう、魚に入っている水銀が胎児に良くないから、心配になっちゃって何も食べられなかったのよね。紅茶のカフェインもそう。一度妊娠初期に紅茶を飲んだらお腹が痛くなったことがあって、たまたまタイミングが悪かっただけだと思うんだけど、それ以来妊婦NGの食べ物には神経質なくらい気を遣うようになっちゃって。気にしすぎだとかえってストレスためるからって浅木先生にも怒られたんだけどね……」

 なるほど、顔色が悪かったり弱々しかったのは、つわりだけじゃなくてストレスもあったのかもしれない。
 しかし今、気になる名前が出たせいで、先生の説明を咀嚼している余裕がなくなってしまった。

「なんで浅木先生が? 今でも連絡を取りあっていたんですか?」

「あっそうか、百瀬さんは妊娠は知っていても相手までは知らなかったのね」

「えっ、じゃあまさか、柿崎先生の結婚相手って」

 何だか嫌な予感がする。心臓がドキドキして、一瞬で体温が上がるのを感じた。