「ありがとう。実はね、既婚者の先生にはすぐ気付かれていたのよ。やっぱり出産経験のある女性の勘はするどいわよね~。でも私がやっぱり気まずくて、生徒には式をあげるまで内緒にしておきたいって言ってしまったの。まだ若い世代の生徒には気付かれないと思ったし、悪影響って言われるのも怖かったし……。教師なのにけしからん、って言う保護者がいないとも限らないからね……」

「古い考えの人はどこにでもいますからね。でも、生徒はみんな先生の味方ですよ。だから安心してくださいね」

「そうね、私も腹をくくって公表するわ。どうせお腹が大きくなったら、時期が合わないってバレることだったしね」

 柿崎先生はさっぱりとした顔で宣言して、運ばれてきた料理を次々つまんでいる。食欲があるのは喜ばしいことだけど、つい最近までつわりだったはずなのでは。

「あの先生、前にお寿司屋さんの支部総会で何も食べられなかったって聞いたんですけど、それもつわりだったんですか?」

「え、そんなことまで噂になってたの? う~ん、生徒の情報網を甘く見ていたわ。かえって混乱を招いてしまってごめんなさいね。ええと、その時にはつわりはおさまっていたんだけど……」

「お寿司だったからダメだったんですね?」

 説明に悩む先生から、菓子先輩がさっと言葉を引き継いだ。