「こむぎちゃん、ふたりが来ないからってすねないの。かわいい顔が台無しだぞ~」

「すねてないですっ。もとからこういう顔なんです! 菓子先輩こそふわふわして、ノンアルコールカクテルで酔っぱらってるんじゃないですか?」

「酔ってませんっ。私だってもともとです~」

 私たちのやり取りを見て、柿崎先生が笑いをこらえている。

「仲いいのね、二人とも」

「はい~。こむぎちゃんはとってもかわいい後輩なんです」

「菓子先輩も、いい先輩ですよ……」

「こむぎちゃん、いいのよ、無理しなくて」

 別に無理をして褒めたわけじゃなく、恥ずかしいからそっけない言い方になってしまっただけなのに。

「それにしても先生、結婚とお子さん、両方ともおめでとうございます」

 菓子先輩がかしこまってお祝いを述べた時、私は先輩がまったく食べていないのを気付かれないように、チキンの骨やピクルスの串を菓子先輩のお皿に移している最中だった。

「あっ、今日は驚いてしまってすみませんでした……。私からもおめでとうございます」

 慌ててお皿から手を離して頭を下げる。できちゃった結婚、なんて揶揄する言葉もあるけれど、ダブルでおめでたいことには変わりない。今目の前にいる先生のお腹に子供がいるなんて、しみじみ考えるとドギマギしてしまうけれど。