「みなさま席には着かれたでしょうか? ではこれから、料理部主催アフタヌーンティーの第一回目を始めます。まず、みなさまに紅茶のおいしい淹れ方をご説明したいと思います」

 菓子先輩が黒板を使って説明している間に、一年生の私たちが紅茶の銘柄の注文を訊き、ティーポットを持って注いで回る。

「香りと色の違いも楽しんでくださいね」

 紅茶が行き渡ったら、いよいよ三段重ねのケーキスタンドの出番だ。

「今回は伝統的な三段重ねのケーキスタンドをご用意しました。メニューは、上の段からスコーン、アップルパイ、サンドイッチです」

 お客様の前にスタンドを置くと、わあ、と歓声があがった。

「まあ、スコーンの形がかわいい! この薔薇のお菓子はアップルパイなの?」

「はい。細長いパイ生地に薄く切ったりんごを並べてくるくる巻くと、薔薇の形のアップルパイになるんです」

「まあすごい……。高校の料理部って本格的なのねえ」

 綺麗な薔薇に見えるように、りんごは食紅で赤く着色してある。今回のメニューで一番こだわった力作がこのアップルパイだ。

 教壇の上では、菓子先輩が英国アフタヌーンティーの歴史を説明している。あとはもう、私たちは紅茶のおかわりを注いで回るだけだ。

「――最後までご清聴ありがとうございます。あとはごゆっくりご歓談ください」

 ふう、と息をついて菓子先輩が調理場に戻って来る。