「正直、私も分からない。でも可能性としてはあると思う」

「前に料理部に入らないって言ったのはそのせいじゃないの?」

「うーん、それはまた違う理由なんだけど。こむぎちゃんは菓子先輩のそれを知ってどうしたいの?」

「もし本当に病気なら、助けたいと思う」

 もちろん、そんなの当たり前だ。菓子先輩が私にしてくれたみたいに、できることがあったら助けたいし、力になりたいって思う。

「お医者さんや家族でもなかなか治せない病気でも? 自分の力でどうにもできないことでも?」

 同意してくれると思ったのに、みくりちゃんは私の目をしっかり見ながら硬い声で告げた。

「それは……」

「ごめん、きついこと言っちゃって。でもそのくらいの覚悟がないと、突っ込んじゃいけないことだと思う。菓子先輩が自分から何も言ってこないなら、なおさら」

 何も言えなくなってしまう。私、もっと簡単に考えていたかもしれない。話を聞いてあげれば良くなるかもって。私は菓子先輩じゃないのに。人の悩みを聞いて、おいしいものを作っただけで誰かの心を溶かす力なんてないのに。

「私、何もできないのかな」

「こむぎちゃん……」

 急に口の中がしょっぱくなって、私は自分が泣いていたことに気付く。

「まだ病気って決まったわけじゃないから。もう少し様子を見よう?」

「うん……」

 みくりちゃんになぐさめられながら、私はこのまま季節が止まればいいのにと思っていた。そうすれば、菓子先輩の引退も、卒業も、ずっとずっとやってこない。

 菓子先輩の料理と笑顔を思い出していたら、涙はなかなか止まってくれなかった。