「アフタヌーンティーってあれですか? 三段重ねのケーキスタンドみたいなのがあるやつ……」

 私は実際にそれを見たことはないが、映画や本で知識だけはある。
 紅茶専門店などに行けばアフタヌーンティーセットも食べられるらしいが、紅茶だけでもお高いし、高校生には無理である。いつか行ってみたいなという憧れだけがあった。

「そうそう。スコーンやサンドイッチ、キッシュやケーキが載っているあれ。それをつまみつつ紅茶を飲むのがイギリスの伝統的なアフタヌーンティーなの」

「でもそれってかなり大変なんじゃ。四人でそれを作って給仕するんですか?」

「だからね、時間制で人数限定にするの。入ってもらったお客様には、三人にお茶を淹れてもらって、私がアフタヌーンティーの作法を講義する……これなら文化的な側面もあるし、四人でも対応可能かなって。幸い、スコーンやキッシュは作り置きしておけるものだし」

 フランス料理店で開催されている、テーブルマナー教室のアフタヌーンティー版みたいなものかな? とぼうっと考えていると、

「なるほどー。すごく面白そうだし、女子受けも良さそうですね!」

 みくりちゃんがまっさきに賛成し、

「すぐに席が埋まりそうだから、整理券を作って予約制にするのが良さそうですね」

 柚木さんが具体案を提案した。

 なんだかこの二人、私よりも菓子先輩といいコンビなのではないか? 私も何かためになる意見を出さなければ。

「あ、あの。茶器とかケーキスタンドはどうするんですか?」

「ティーポットとカップは調理室に揃っているぶんでまかなえそうだし、ケーキスタンドも実は在庫があるのよ……。確かこのへんの棚だったはず……」

 菓子先輩は調理室のすみっこにあった棚をがさごそ探り始めた。

「あ、あった。これこれ」

 菓子先輩が埃をかぶった箱から取り出したるは、金色の装飾が美しい、白いお皿のケーキスタンド。