「あのさ、ちょっと作りすぎたから食べてくんない? このホットサンド」

「な、なんで私たちに?」

 急にフレンドリーになってどうしたんだ、柚木さん。私が驚いているのだから、みくりちゃんたちが半ばおびえたようになっているのも無理はない。

「ん~、食事くらいはさ、ふだんつるんでなくても一緒に食べていいのかなって思って。昼休みだけだったら、にぎやかでもいいじゃん」

「――私もそう思う!」

 みくりちゃんが柚木さんの目配せに反応して、ぱっと顔をかがやかせた。

「ふだん一緒にいない人とも話せるからいいよね、お弁当って。あっ、こっちに机くっつけなよ~」

 わざとらしい口調で私たちの移動をうながすみくりちゃん。グループの他の子たちも意図に気付いたみたいで、

「そ、そういうことなら」

「うん、お弁当の時間だけなら全然、いいかな」

「小鳥遊さんと柚木さんも、おいでよ」

 ぎこちなくも私たちを誘ってくれた。

「だってさ。良かったじゃん、小鳥遊さん」

 柚木さんが私の頭にぽんと手をおく。まったくもう、この人は、柄にもないことをして。涙をひっこめるのが大変じゃないか。

 なんだか少し居心地が悪そうにそわそわしている柚木さんと、それをからかうみくりちゃん。少しずつ会話に加わるみんな。ランチタイム限定のちょっとでこぼこグループは、おいでおいでと私に優しく手招きしてくれた。


 一匹狼のホットサンドは、親子をつないで、友達をつないで。そうしていつの間にか一匹狼は、ただの狼になっていたのでした。


 雨上がりの空からひょっこり顔を出した太陽。ななめに射し込む金色の光が、祝福のように私たちに降り注いでいた。