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「小鳥遊さん、ちょっといい?」

 お昼休み。いつもだったらチャイムが鳴ってすぐ席を立つのだが、それよりも先に柚木さんが話しかけてきた。

「え、うん。どうしたの?」

「昨日教わったホットサンド、いろいろ作ってみたんだ。お礼に食べてくれない? あーでも、自分のお弁当あるか、そういえば」

「ううん、お弁当だけじゃお腹いっぱいにならないし、大丈夫。ありがとう」

 そう言ってホットサンドを受け取ろうとしたけれど、柚木さんは「じゃあ、あたしの机で食べよう」と言って机の上に置いてあった私のお弁当を持って行ってしまった。

 柚木さんの机の近くは、いつもみくりちゃんたちがお弁当を食べるのに集まっている場所で。どうしようと思いつつも、お弁当箱を人質に取られた私は困惑しながら付いていくしかなかった。

「柚木さん、あまり人とつるむの好きじゃないって言ってたから、食事は一人でしたいのかと思った」

 椅子だけ持っていって、柚木さんの机におじゃまする。なんだか不思議な気分。外では一緒にいたけれど、教室で柚木さんと話すのは、そういえば初めて。

「ちがう。あたしは、気の合う人と、必要なときに一緒にいたいって言ったの」

 柚木さんが、「気の合う人」に自分を選んでくれたことがとても嬉しかった。

「今はその必要なとき?」

「うん。やっぱり食事は誰かと一緒に食べたほうがおいしいなって気付いた。それに、自分で料理するようになるとなんだか、人に食べてもらいたくなるね」

「うんうん、分かる」

「小鳥遊さんと百瀬先輩を見ててさ、食事のときくらいにぎやかでもいいのかなって考えるようになったよ。――ねえ!」

 柚木さんが急にみくりちゃんたちに声をかけるから、びっくりしてお尻が数センチくらい浮いてしまった。みくりちゃんたちも、何事だという顔でおそるおそる柚木さんを見つめている。