「は、はい……。おかげさまで……。あの時はありがとうございました」

「いえいえ。御厨さんが彼氏とうまくいってるなら何よりだわ」

「は、い……。あの……」

「じゃあ私は先に帰るわね。あとはふたりでごゆっくり」

 菓子先輩はにっこり微笑んでから、ふわふわした足取りで去ってしまった。

 みくりちゃんとちゃんと向き合うのは数日ぶりで、お互い何を話していいのか分からず、沈黙だけが夜の帳に降り積もっていった。

「……こむぎちゃん、ごめんね」

 先に沈黙を破ったのはみくりちゃんだった。

「えっ、なにが?」

 てっきり、ここ数日避けていたことを問い詰められると思っていたのに。

「あの子たちに事情は聞いたよ。ひどいこと言わせちゃって……聞かせちゃって、ごめん。こむぎちゃん一人だけにつらい思いさせて、私はのうのうといつも通り過ごしてて、何もできなくて、ほんとに、ごめん……」

 みくりちゃんは、泣いていた。暗くても分かるくらい、盛大にしゃくりあげていた。

「えええ……。どうしてみくりちゃんが謝るの? 私、みくりちゃんにつらい思いさせたくなくて、それで……」

「それが一番つらいんだよ、バカッ!」

 いきなり怒鳴りつけられて固まってしまう。あの優しいみくりちゃんが、バカと言うなんて……。
 思わず私の目にも涙がにじむ。