「真剣な顔して何を言うのかと思ったら……。そんなこと気にしてたの? 早く言えば良かったのに」

「えっ……えっ?」

 柚木さんは気が抜けたようにテーブルにつっぷしたが、私の頭の中ではハテナマークが踊っていた。菓子先輩はのんきにお茶のおかわりを淹れている。

「ていうか、クラスの状態なんて見てれば分かるし。特にあたしみたいに一人だと、人間観察ばっかり得意になるからね~。小鳥遊さんが急に御厨さんたちとうまくいかなくなったのも知ってたよ」

「じゃあ、どうして」

 鋭い人なのかなとは思っていたけれど、柚木さんがそこまで知っていたなんて。でも、だったらなおさら、私のことは幻滅してもいいはずなのに。

「あたしが小鳥遊さんいいなって思ったのは、自分の保身に走るんじゃなくて、御厨さんのために進んで一人になったとこかな。グループって入るときより抜けるときのほうが勇気いるじゃん、あたしが言っても説得力ないけど」

 そうだった。自ら進んで一人に戻るのは、あたたかい場所があるのにわざわざ雪山に飛び出していくようなつらさだった。友達と過ごすあたたかさを知ってしまったら、何も知らず一人だったころには戻れない。コタツの中から動かない猫といっしょ。

「そんなことまで、分かってくれていたんだね……」

 自分の痛みは自分のものだから、だれかと共有なんてできないと思っていた。でも今、柚木さんが知っていてくれたことがとても嬉しい。同じ体験をしなきゃ理解できないなんてこと、なかった。ただ、分かってもらえるだけで救われるんだ。

「あとさ、あたしが今日まで休まず学校行ってたの、小鳥遊さんのおかげでもあるんだよね」

「え、私の?」

 意外な言葉に語尾がひっくり返ってしまう。