「母の料理を手抜き料理ってバカにしてたあたしがバカみたい。そんな手抜き料理すらできないし、母はこれを仕事しながら毎日やってたんだなって考えると……」

「柚木さん……。私も自分で料理してみるまでお母さんのありがたみなんて分からなかったよ、柚木さんは毎日お手伝いしていてすごいよ」

 それは慰めじゃなく本音だった。私は家事なんて休みの日に自分の部屋を片付けるくらいで、ほとんどお母さんに任せっきりだった。もしお母さんが病気になったら、洗濯機の使い方も分からなくて大惨事になりそう。

「そんなことないよ、二人きりだからやむにやまれずでやっているだけ。あ~、明日からご飯とお弁当どうしよう……。毎日コンビニじゃお金足りなくなるよ……」

 こんなとき友達ならどうしたらいいのだろうか。毎日おにぎりを作って持って行く? いや、それじゃ柚木さんが遠慮してしまうだろう。ここにいるのが私じゃなくて、もっとちゃんとした友達だったら、柚木さんに元気を出してもらうこともできたのだろうか。

「なんで小鳥遊さんまでどんよりしてるのさ~」

「いやあの、ごめん……」

「私こそ暗い話しちゃってごめん。柄にもなく落ち込んじゃった。大丈夫だからさ、気にしないでよ」

 そうは言われても、ここまで聞いて何もできないなんて。

「柚木さん、これは?」

 菓子先輩が台所の隅に置いてある大きい箱を示す。

「あ~、なんか母が忘年会で当ててもらってきたけど使ってないやつ」

「ちょうどいいわ、これなら柚木さんでも簡単な朝食とお弁当が作れるわよ」

 菓子先輩は立ち上がり、いそいそと箱の中身を取り出し始めた。

「菓子先輩、それって」

「ホットサンドメーカーよ。これがあれば主食もおやつも思いのままの、魔法の機械よ」