「えっ、柚木さんから返事だ。早い……」

「こむぎちゃん、柚木さんからは何て?」

「えっと……」

 まだ使い慣れないメール画面をスクロールしていく。

『心配してくれてありがと。実は母親の具合が悪くて、心配だから学校休んじゃった。もしかしたらしばらく休むかも。早く本渡したかったんだけどな~。ごめんね』

 柚木さんからのメールを読んで、背筋がひやっとした。本人に何もなかったのは良かったけれど、学校をしばらく休まなきゃいけないなんて、お母さんの具合は相当悪いんじゃ……。

「菓子先輩、どうしよう……」

 本当はいけないことなのかもしれないけれど、焦って菓子先輩にメール画面をそのまま見せてしまった。

「う~ん」

 菓子先輩はメールを読んだあと、珍しく眉間に皺をよせて考え込んでいた。

「柚木さんのお母さまは看護師さんなのよね? だったらきっと病院にはかかっていると思うけれど……。どちらかというと柚木さんが心配だわ」

「私もちょっとメールの元気がない気がしました。お母さんの様子もこれだけじゃ分からないし、でも聞いていいのかも分からないし……」

 母親思いの柚木さんのことだ、きっと心細い思いをしているだろう。でももし本当に重い病気だったら、昨日仲良くなったばかりの私が聞いていいものなのだろうか。

「だったら、お見舞いに行っちゃえばいいんじゃない?」

「えっ?」

 メールの返事さえためらっている私に、この先輩は一足飛びに大胆なことを言い出す。

「きっと退屈しているだろうし、こむぎちゃんの持ってきた本を届けてあげたら喜ぶんじゃないかしら。柚木さんの家の場所は知ってるんでしょ?」

「昨日、ピーチ通りの近くのアパートだって言ってました。隣にコンビニがあるからすぐ分かるって」

 でも、さすがに迷惑なんじゃ。私がぐずぐず迷っていると、菓子先輩がまたまた予想外のことを言い出した。