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 その日の夜、夢を見た。アフォガードの海に溺れる夢。

 泳いでも泳いでも、エスプレッソが口の中に入って苦くて、やっと陸に着いたと思ったらそれはアイスクリームで、手をかけた端から溶けて崩れていってしまうのだ。

 溺れかけていると、なぜか巨大化した菓子先輩がずーんと現れ、

「こむぎちゃん、こんなに小さくなっちゃって! 今助けてあげるわね」

 とティースプーンを差し伸べてくれた。

 どうやら海だと思っていたのはコーヒーカップの中で、私は小さくなってしまったらしい。

 ティースプーンにしがみつこうとしたら、

「先輩、そんな嘘つき助けてあげることないですよ」

 と大きな柚木さんが現れた。

「そうだそうだ」

「そのまま溺れてしまえばいいんだ」

 気付くと、みくりちゃんやクラスの友達もコーヒーカップのまわりを取り囲んでいた。

「ごめんなさい、ごめんなさい。迷惑かけて、気を遣わせて、嘘もついてごめんなさい」

 小さくなった私の声はみんなには届かない。

 私はそのまま、熱くて冷たいアフォガードの海に、ごぼごぼと沈んでいった――。


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