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 菓子先輩が淹れてくれたミルクティーは、身体があったまるようにショウガ入りだった。シナモンも入っているのかな? 一口飲むとチャイっぽい味がして、胃の中がぽかぽかしてきた。

「実は、みくりちゃん以外の同じグループの子とうまくいかなくなってしまって。……というか、他の子たちは最初から迷惑していたのかも」

 数日前、私がトイレに入っているとき、グループの子たちが洗面台で話しているのが聞こえてきてしまったのだ。

「小鳥遊さんってさ、なんか一緒にいると気を遣っちゃわない?」

 自分の名前が耳に飛び込んできて、心臓が大きく跳ねる。私が個室に入っているのには気付いていないみたいだ。どうか心臓の音が聴こえませんように、と息を潜めながら会話に耳をすませた。

「分かる。悪い人じゃないんだけど……。ノリが違うよね」

「みくりちゃんと仲がいいから一緒のグループにいるけど、正直、小鳥遊さんはもっと大人しい子のグループの方が合う気がする」

「でもさ、それみくりちゃんに言える?」

「言えないよー……。みくりちゃんは怒るだろうし、さすがに仲間はずれみたいなことはできないし」

 予鈴の音が鳴る。グループの子たちは身だしなみを整え終わると、「この話はここだけの秘密にしておこうね」と言いながらさっさと教室に戻って行ってしまった。

 みんなの足音を見送ったあと、全身の血の気が引いて、貧血を起こしたみたいに個室の中でうずくまってしまった。

 目の前がぐるぐるする。気持ち悪い。なんだか呼吸も苦しい。

 今の会話はなんだったのだろう。

 グループの他の子たちも、普通にいい子たちだった。後からグループに入ってきた私のことも受け入れてくれて、みんなと同じように接してくれた。
 確かに、少し気を遣われているというか壁があるような気はしていたけれど、それも優しさのうちなのだと思っていた。

「本当は最初からずっと、迷惑だったんだ……。でもずっと我慢してくれていたんだ……」

 “普通”で“いい子”だったからこそ、今まで優しくしてくれたし、だんだん窮屈になって愚痴も言いたくなったのだろう。そんな彼女たちを責めるなんてできない。