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 次の日の放課後。私たち三人はまた調理室に集まって、ハンバーガー作りを開始していた。菓子先輩の指示にしたがって、野菜を切ったり、パティにするハンバーグのたねをこねたり。
 みくりちゃんも何か手伝いたい、と申し出てくれたので、洗い物やソース作りをお願いした。

 作るものは私のリクエストでアボカドバーガー、ソースは玉ねぎをすりおろして醤油や酢と合わせた和風ソース。

 パティは薄く焼いたほうが食べやすいのではと思ったが、バーガーの高さを出すために立体感を出しましょう、と菓子先輩に提案された。楕円形にふくらんだパティからは肉汁がじゅうじゅうとあふれて、焼いているだけでよだれが出てきた。

 学校の調理実習にはあまりいい思い出がないけれど、こうしてみんなで料理するのは一人でするよりも楽しいんだなと気付いた。

 調理室いっぱいに広がるおいしい香り。ときおり聴こえてくる吹奏楽部の音色。以前だったら胸がちくりと痛くなった、廊下から聴こえる楽しそうな笑い声。それらすべてが、今はとても優しい気持ちで愛しく思える。

 菓子先輩のスープのおかげで私の毎日は変わった。だから今度は私が「おいしいものの力」でみくりちゃんを助けたい。


 バンズの上に焼きあがったパティと野菜、ソースを慎重に重ねて。最後にゴマをまぶしたバンズをふわっと置いて、串を通す。

「……完成~っ!」

 できあがった特大ハンバーガー。お皿にどーんと乗ったそれが並ぶ様は圧巻だった。

 レタスはしゃきしゃき、トマトもアボカドも分厚くておいしそうで、玉ねぎは甘さをだすために少し焼き目をつけた。ソースもたっぷりで、具のあいだからあふれている。