「うん。ちょっとこれを見て」

 みくりちゃんがポケットからスマホを取り出す。私たちに見せてくれた画面には、串にささったハンバーガーが映っていた。バンズの大きさは意外と普通。でも、

「これ、高さがふつうのハンバーガーの十段サイズくらいない?」

「最近こういう本格派の手作りハンバーガーがはやっているみたいで。SNSでも人気でよく見るよ」

 パティも分厚いし、玉ねぎやトマトなどの野菜も厚みがある。串にささっているのは倒れないためなのだろう。確かにおいしそうだ。

「へえ、アボカドにサルサソース……種類もたくさんあるのね。すごく手が込んでいるわ」

「そうなんです。でもこういうお店って高くて……。高校生が入るにはちょっとハードルが高いんです」

「そこで私たちの出番なのね?」

「はい。こんな大きなハンバーガーをきれいに食べられるようになれば、自信がついて彼氏の前でも普通に食事ができるようになるんじゃないかと思ったんです。自分で作ろうとも思ったんですけど、私、料理は全然ダメで。材料費は出すので、ぜひ作ってもらえませんか?」

 私と菓子先輩は再び顔を見合わせて、もちろん、と大きく頷いた。

「うーん、腕がなるわあ。私もこんな大きなハンバーガーを作るのははじめて」

「このアボカドのやつ、作ってみたいです。バンズも作るんですか?」

「そうねえ、できれば作りたいけれど、パンは発酵に時間がかかるし、そこは妥協して市販のものを使いましょうか」

「材料費も、三人で割れば安くすみそうですね」

 菓子先輩とてきぱき段取りを決めていく。みくりちゃんは逐一、感心したように頷いていた。

「こむぎちゃん、今日が実質料理部初日なのに、すごく頼りになるわあ」

 菓子先輩の言葉で、顔が赤くなってしまった。ちょっと張り切りすぎてしまっただろうか。

「二人ともすごいなあ。やっぱり私も料理とか、少しはできたほうがいいのかな。女子力的に……」

「みくりちゃんは、そのままで充分だと思う」

「私もそう思うわ。でも、お料理に興味が出たなら、いつでも入部大歓迎よ」

 私は自信満々に答えたのだが、菓子先輩はちゃっかり勧誘するのも忘れていなかった。