「まあまあ御厨さん。こむぎちゃんは置いておいて、私に頼みって何なのかしら?」

「あ、そうですね。本題がまだでした」

 みくりちゃんはすっと姿勢を正したと思うと、

「……えっと」

 急にもじもじし始めた。

「遠慮しなくていいのよ? 何でも話してね」

「はい……。あの、実は最近、彼氏ができて。中学のときの男子バレー部の先輩なんですけど、通学のバスが一緒で親しくなって……」

「まあ! それは嬉しい報告ね」

 きゃっきゃとはしゃぐ菓子先輩をよそに、私の心には雷鳴がとどろいていた。
 私が人生初の恋に浮かれている間に、みくりちゃんには彼氏が二人もできているなんて――。

「みくりちゃん。お、おめでとう……」

「ありがとーっ。なんか失恋の話のあとにこういう報告するのも恥ずかしいんだけど」

「もしかして、その彼氏について相談したいとか……なのかしら?」

「うーん、半分はそうなんですけど。どちらかというと私自身の問題です」

 みくりちゃんの顔が翳る。私と菓子先輩も、笑顔を消してみくりちゃんと向き合った。


「――実は私、ハンバーガー事件のあとから、好きな人の前で食事できなくなってしまったんです」