「それでね、そのクラブハウスサンドがすごくおいしかったんだ」

 週明け、私はすっかり打ち解けた御厨みくりやさんに浅木先生のお店の報告をしていた。

「具がたっぷりでね。たまごはふわふわで、ベーコンはジューシィで……。パンもカリッと焼いてあっておいしかったなぁ……」

「そのお店、聞いたことあるかも。元うちの学校の先生がやってるお店でしょ? その先生、学校にいた頃からすごく人気で、先生目当てでお店に通ってる子もいるらしいよ」

「え……そうなんだ」

 ものすごくライバルが多いことが判明して、がっくりしてしまった。別に先生と付き合えるとか、そんなずうずうしいことを考えていたわけじゃないんだけど、ちょっとは期待してしまっていたのかな、私……。

「私はあんまりイケメンには興味ないけど、そんなにおいしいなら一回行ってみたいなあ」

「ほ、ほんと!? 今度一緒に行こうよ」

 菓子先輩に続いて御厨さんとも放課後デビューか、と思うと嬉しくて、思わず前のめりになってしまう。

「あっ……えっと、御厨さんが嫌じゃなければ……」

「一緒に行きたいに決まってるじゃーん! あと御厨さんじゃなくてみくり、って呼んで欲しいな。私もこむぎちゃんって呼ぶし」

「うん、みくりちゃん」

 みくりちゃんがにっこり微笑む。付き合ってみると、みくりちゃんはさっぱりしていて面倒見の良い子で、とても話しやすかった。クラスでも会話の中心にいることが多いし、みんなのお姉さんという感じ。

「あ、そういえばさ……。この前こむぎちゃんにスープカレー渡してた先輩、料理部の部長さんなんだって?」

「うん。実は私も料理部に入ったんだ」

「えっ、もうすでに入っているのかと思っていたよ。先輩と親しそうだったし」

「それは色々とあって……。それで、菓子先輩がどうかしたの?」

「う~ん……。実はちょっと、頼みたいことがあって」

 みくりちゃんは珍しく言葉を濁した。