「あのう、菓子先輩、もしかして先輩と浅木先生って、付き合っていたりしますか……?」

 浅木先生が席から離れてから、菓子先輩におそるおそる聞いてみた。

「何言ってるの、こむぎちゃん。そんなわけないでしょう」

「だってすごく仲が良いし」

「あの先生は誰にでも気さくなだけよ。それに学校にいたころはもうちょっと先生らしい感じだったのよ? 今は客商売だから、ちょっと印象が違うみたい。それにほら、私はお得意さまだし」

「そんなにしょっちゅう来ているんですか?」

「料理のアドバイスが欲しい時とか、たまにね。そんなに私と浅木先生のこと、気になるの? ……こむぎちゃん、もしかして」

 菓子先輩の目が好奇心旺盛にきらきらと光る。私はこの目を知っている。これは、他人の恋バナを見つけたときの女子の目だ。

「ちがいます! 全然ちがいます! 菓子先輩が考えているようなことはまったく、ないですから!」

「そうなの……。ざんね~ん……」

 世話好きの菓子先輩のことだ。余計なおせっかいをいろいろ焼かれ、それが浅木先生にばれ、私が丁重にお断りされる――ところまで目に見えた。この気持ちは菓子先輩には決して見つからないように、大事に大事に育てていかなければ。

「じゃあ、気を取り直してメニューを見ましょうか。こむぎちゃん、何でも好きなものを頼んでね。今日は歓迎会だし、さっきのお詫びに私がおごるわ」

「えっでも、悪いですよ」

 学校はアルバイト禁止だから、先輩だってお小遣いが苦しいのは同じはずなのに。

「大丈夫だから気にしないで」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 もしかして先輩の家はお金持ちなのだろうか。桃園高校は公立だけど歴史のある女子高なので、良いおうちの子も多いって聞いたことがある。そういえば菓子先輩は、話し方も古風なお嬢様っぽいし。