はっ、と気付いたように菓子先輩が私の目を凝視する。顔色が赤から青にさーっと変わるのが少しかわいそうに思えた。
 好き嫌いは良くないことだけど、せっかく言わないようにしていたのに。

「ま、まさか?」

「そのまさかです。菓子先輩のお母さんは、かぼちゃをペーストにしてキーマカレーに入れていたみたいです……」

 菓子先輩は、う、と言いながら口をおさえた。

「そ、それは知らないままのほうが良かったかも……」

「これを機に、好き嫌いもなくしたらどうですか」

「こむぎちゃん、きびしい……」

「もう、菓子先輩に甘くする理由ないですから」

「ひどい、受験生なのに」

 こんな軽口をたたけることが嬉しい。

 これで菓子先輩は何の心配も不安もなく、受験と卒業、新しい日々に向かって行ける。
 もう、私がいなくても大丈夫。味見してくれる人も、心配してくれる後輩も必要ない。私がいないことにもだんだん慣れてしまうのだろう。
 菓子先輩の大学生活はきっと、希望に満ち溢れているのだから。