『僕も柚木さんの意見に一票。家族には内緒で隠し味を入れていたんだと思うな。なんでレシピに書かなかったのかは、こむぎちゃんなら分かるはずだよ』

「……だって」

 二人にも、浅木先生からの返事を読み上げる。

「あたしの推理、当たってるかもしれないじゃん」

 柚木名探偵が嬉しそうである。

「でも、私なら分かるってどういうことだろう。内緒で入れるような隠し味なんてあるのかなあ」

 悩んでいると、みくりちゃんが「う~ん、私の経験なんだけど、いいかな」と言いながら話し始めた。

「隠し味かどうかは分からないんだけど、私小さいころピーマンが苦手だったんだ」

「えっ、みくりちゃんが?」

 なんでもおいしく食べる、健康優良スポーツ少女のみくりちゃんに好き嫌いがあったなんて意外だ。

「うん。どうしても食べられなくて残しちゃうから、お母さんがみじん切りにしてハンバーグに入れてたんだ。その時は気付かなくて、食べられるようになってからネタばらしされたんだけどね」

「あ~、あたしもそうだったかも。ちっちゃいころ、野菜あんまり食べなかったみたいで、裏ごししてポタージュにしてたって聞いたことある」

「へえ~、そうなんだ」

 自分は小さいころから好き嫌いがなかったので、そういった話は聞いたことがなかった。
 でもそういえば、お母さんがカレーに野菜ジュースを入れているのを見たことがある。どうしてって尋ねたら、結婚当時お父さんがあまり野菜を食べてくれなくて、そのときに生み出した苦肉の策だと言っていた。
 野菜を分からないようにして入れるのは、どこの家でも定番なのだろうか。