型で抜いたごはん、ココットに入れたキーマカレー、口直し用のレタスとトマトをプレートに盛り付ける。ナンは作る時間がなかったので、残念だけど省略。

 居間で待っている三人のもとに持っていくと、「おお」と歓声があがった。

「まあ、お上手。盛り付けもきれいねえ」

 おばあちゃんが褒めてくれる。レシピ帳に描いてあったイラストそのままに盛り付けただけなのだが。

「おいしそうだ。キーマカレーは久しぶりだな」

「うん。お母さんのキーマカレーと、そっくり」

 菓子先輩がプレートを見ながらつぶやく。おばあちゃんとお父さんがはっとして、心配そうに菓子先輩を見つめる。
 空気が緊張して、私も固まってしまった。

「もう、そんな顔しないでよ。私なら大丈夫よ」

 菓子先輩が気丈に微笑む。その顔がなんだか泣き出しそうに見えて、私もつられそうになってしまう。
 こんなことをして、間違いだったらどうしよう。菓子先輩の傷をえぐるだけだったのかもしれない。

 うつむいてスカートを握りしめていると、菓子先輩が私のこぶしの上にそっと手をのせた。

「こむぎちゃん、ありがとう。ずっと自分では作れなかったから……」

 私の手に触れたまま、菓子先輩がキーマカレーを口に運ぶ。菓子先輩の手はかすかに震えていた。

 カレーを食べているとは思えない神妙な顔で、菓子先輩は咀嚼し、ごくんと飲みこんだ。その表情は変わらない。
 だめ……だったのだろうか?

 じっと見つめていると、菓子先輩は力なく首を横に振った。

「ごめんね」

 私が何を期待しているのか、菓子先輩に悟らせてしまった。