ぴったり並んだお布団。修学旅行みたいだけど、ふたりきりだと自分の寝息まで聞こえてしまいそうで落ち着かない。

 暗闇の中でぼんやり光るオレンジ色の豆電球。天井を見上げると、ああ今自分は菓子先輩の部屋に泊まっているんだなあって実感した。
 お布団からは、かすかに樟脳のにおいがする。いつも一緒に寝ている熊のぬいぐるみが恋しいけれど、ちゃんと眠れるだろうか。

「……こむぎちゃん、起きてる?」

「……はい」

 先に寝たと思っていた菓子先輩が、内緒話するくらいの音量でぽつりとつぶやいた。

「シュシュ、まだ大事にしてくれていたのね。ありがとう」

「気にいってるから……」

 菓子先輩みたいになりたくて伸ばした髪。私の髪は茶色っぽい猫っ毛で、菓子先輩みたいなつややかな黒髪じゃないから、同じシュシュを使っても同じようにはなれなかったけれど。

 ――沈黙と、静寂。遠くで猫の鳴き声がする。

 菓子先輩が、何か言おうとして止めた気配がした。ふう、と長い息の音がして緊張が走る。

「こむぎちゃん、浅木先生に聞いたのね」

 心臓がドキッと大きく動いた。事実を知ってしまったことを、菓子先輩にいつ言おうか迷っていた。