「ただいま~。って、こむぎちゃん、そんなにかしこまらなくてもいいのよ」

「は、はい」

 お風呂あがりの菓子先輩は血色も良くなっていて、来たときよりも元気そうに見えた。しっとり濡れた髪を、おそろいのシュシュで束ねている。
 パジャマが私のものと色違いなのはどうなのだろうか。いや、菓子先輩のお気に入りなのだろうけれど、ペアルックでパンツも――と考えると顔が赤くなってきた。

「こむぎちゃん、ダメじゃない、濡れた髪をそのままにしちゃ」

「だってドライヤーがどこにあるか分からなくて」

「洗面台の下にあったのに。仕方ないわね、私が乾かしてあげる」

 菓子先輩がドライヤーを取ってきてくれて、優しい手つきで乾かしてくれた。

「髪、伸びたわね。入学したときは短かったのに」

「伸ばしたんです。大人っぽくなりたくて」

 ドライヤーの音がうるさくて、近くにいるのに大きな声で話をする。

「そんなこと気にしなくても、じゅうぶん大人の顔になったわよ、こむぎちゃんは」

 聞こえていたけど、聞こえないふりをした。菓子先輩の手はお風呂あがりでほかほかしていて、ドライヤーもあったかくて、身を任せていたらとろんと眠たくなってきた。

「こむぎちゃん、眠いの?」

「……はい、少し」

「まだ早いけど、寝ちゃいましょうか。きっと明日はおばあちゃんが朝早く起こしに来ると思うし」

 はいおしまい、と肩を叩かれたので、通学バッグからおそろいのシュシュを出す。菓子先輩と同じように束ねると、

「髪形まで、おそろいね」

 と喜んでくれた。