一番風呂をいただくと、すでに菓子先輩の部屋に布団が敷かれていた。

「ありがとうございます。菓子先輩が敷いてくださったんですか?」

「ううん、おばあちゃん。私は横になってろって言われちゃった」

「そうですか……。あ、パジャマとか下着とかありがとうございます」

「いえいえ。ちょうど新品があったから良かった」

 なんとパンツまでいただいてしまった。すっかり着替えのことを失念していてお風呂のときに慌ててしまったのだが、菓子先輩が「まだ使ってないから」とタンスから下着を出してくれた。レースのついた純白のパンツ。菓子先輩らしい好みだったけれど、なんだか恥ずかしい。

「次、菓子先輩が入れっておばあちゃんが言ってましたよ。昨日入れなかったからって」

「うん、じゃあいただこうかな」

「大丈夫ですか? 何か手伝いますか?」

「お風呂くらい一人で入れるわよぉ。こむぎちゃんは心配しすぎ」

 心配になって声をかけてしまったが、断られた。じゃあ一緒に入って、と言われてもそれはそれで困ったかもしれないけど。まあ、さっきおじやは全部食べていたし、きっと大丈夫だろう。

「さて……」

 菓子先輩がいない間に、やりたいことがあった。

 勝手に読むのは良くないと思いつつも、レシピ帳に手を伸ばす。シンプルな大学ノートが、「おかず」「主食」「汁物」「デザート」にインデックス分けされていた。

 なんとなく、汁物のページから目を通す。最初の日に菓子先輩が食べさせてくれたミネストローネが目についた。トマト缶によって味付けを調節することも書いてある。
 そして、ミルクスープ。味噌を隠し味に入れるのはお母さんが教えてくれたのか。
 ほかにも、豚汁、スープカレー。菓子先輩が作ってくれたそのままの料理が、レシピ帳に刻まれていた。