夕飯の時間になるとおばあちゃんが呼びに来た。パジャマ姿の菓子先輩を支えながら居間に向かう。

「おばあさんじゃないんだから、大丈夫よぉ」

 とすねていたが、足取りがふらふらしていて危なっかしくてしょうがない。

 食卓の上は豪華で、鶏の水炊き、里芋と人参の煮物、白菜の漬物、などなどがテーブルいっぱいにずらっと並んでいた。刺身はわざわざ買いに行ってくれたのだろうか。おばあちゃんち特有の雑多なメニューが、歓迎されているようで嬉しかった。

「田舎の農家だから、ごちそうって言ってもばあちゃんこんなものしか作れなくてごめんねえ」

「いえ、すごいです。旅館の夕ご飯みたい」

「菓子ちゃんには、水炊きのダシでおじや作ったから。ちょっとでも食べんさい」

「うん。ありがと、おばあちゃん」

「じゃあ、いただきます」

 野菜はどれも濃くて甘くて、お米も自分の家で食べている味とは違った。水炊きも、ポン酢をかけなくても食べられるくらいおいしい。

「すごくおいしいです。野菜もお米も、味がちがう!」

「ありがとうねぇ。お米はね、山から流れてくる水がきれいだから、このへんのお米はぜんぶおいしいんだよ」

「そうなんですか」

「菓子ちゃん、食べられそうかい」

「うん、大丈夫」

 菓子先輩はちびちびと特製おじやを食べている。おばあちゃんは、心配そうな顔で菓子先輩の食事を見守っていた。


 夕飯を食べ終えてお茶を飲んでいると、にゃーという声がした。振り向くと、アメショみたいなサバトラの猫がしっぽを立てながら近付いてきた。菓子先輩に頭をすりすりしている。

「さっちゃん、おかえり。おなかすいちゃった? カリカリ出てるわよ」

「菓子先輩の家の猫ですか?」

「ううん、うちにも遊びに来るけど、このへんのいろんな家でごはんもらってるみたい。ほんとはうちの子にしたいんだけど、ぷいっとどこかに行っちゃうの」

「へえ……」