「こ、こむぎちゃん!? なんで……、どうし……」

 急に起き上がったせいで咳き込んでしまった菓子先輩の背中をさする。

「倒れたって聞いて、心配で……。お見舞いに来ちゃいました」

「ええっ」

「そしたらバスがなくなってしまったので、お泊りすることになっちゃいました……」

「えええっ。な、なんですぐ起こしてくれないのよぉ」

 さっきまで触れたら消えてしまいそうだった菓子先輩がすっかりいつもの調子だから、あまりにほっとしてじわっとまぶたが熱くなって、

「具合悪くて寝てるんだから、起こせないでしょっ。いいから菓子先輩は横になっててくださいっ」

 恥ずかしくなって菓子先輩をお布団に押し込んでしまった。

「わ、分かったわよぉ……」

 菓子先輩を助けるまで泣かないって決めたのに涙が止まらない。

「こむぎちゃん……。心配かけて、ごめんね」

 そっぽを向いて涙をぬぐっている私に、ぽつりと菓子先輩がつぶやいた。

「そうですよっ。弱ってる菓子先輩なんて菓子先輩じゃないです。早く元気になってくれないと、ダメなんですから……っ」

 ああダメだ。涙混じりの声になってしまった。鼻をすすったのも、ぜったい菓子先輩にバレてる。

「うん。ありがとう」

 とろんとした声のあとしばらくして、菓子先輩のすやすやとした寝息が聞こえてきた。