「こむぎさん、ここからはどうやって帰るのかね?」

「え、来たときと同じバスで……」

「もう最終バスは行っちまったよぉ。ここのバスは一時間に一本もないからねえ」

「ええっ!?」

 おばあちゃんの言葉に驚く。私が甘かった、帰りのバスの時刻表なんて見ていなかった。

「どうしよう……。どうやって帰ろう……」

 タクシー代なんて持ってないし。親に電話して来てもらうと言っても、ここの場所が分からないと思うし。

「泊まっていけばいいよぉ」

「えっ、で、でも」

 初めて来たおうちで、しかも先輩は具合が悪くて寝ているし、さすがに身の置き場がない。

「どうせ息子は仕事で遅いし、部屋は余ってるし。菓子ちゃんがずっと寝ていてばあちゃんもさびしいから、こむぎさんが泊まってくれたらみんな嬉しいねぇ」

「は、はぁ」

「そうと決まったら、ばあちゃん夕飯の準備しないとねえ」

 おばあちゃんはうきうきして台所行ってしまった。押し切られた格好だけど、実際他の方法が思いつかないし、ここはおばあちゃんに甘えるしかないかも。

 とりあえず家に連絡しなければ。お母さんにメールを打ちながらちょっと迷って、みくりちゃんと柚木さん、浅木先生にも送ることにした。

『菓子先輩によろしくね。みんな心配してるって伝えてね』とみくりちゃん。

『ばあちゃんのキャラうけるんだけど』というのは柚木さん。

 浅木先生からは『何か解決の糸口になるものがあるかも。がんばってね』と激励をいただいた。