仏壇の部屋は薄暗くてしっとりしていて、静謐な空気が漂っていた。

 黒塗りの立派な仏壇の前に正座する。遺影が二枚飾ってあって、一枚はたぶんおじいちゃん、もう一枚が菓子先輩のお母さんだった。菓子先輩がそのまま大人になったような優しそうな美しい人で、訊かなくてもすぐ分かった。

 お線香を上げて手をあわせていると、おばあちゃんが戻ってきた。

 ふた付きの湯飲み茶碗に入った緑茶と、おいしそうな和菓子を出してくれる。

「あんまり若い人が好きそうなお茶菓子がなくてねえ、すみませんねえ」

「いえ、甘いもの大好きなんです。いただきます」

 私がお茶と和菓子をいただくのを、おばあちゃんがにこにこして見ている。菓子先輩も歳をとったら、こんなおばあちゃんになるのかな。しわくちゃの菓子先輩を想像しようとしたけれど、うまくいかなかった。

「わざわざ菓子ちゃんを心配してお見舞いに来てくれて、ありがとうねえ。昨日学校の先生に送られてきたときは、ばあちゃんもたまげたよぉ」

「菓子先輩の様子はどうですか?」

「昨日は顔色も悪かったけれど、今は落ち着いてるねぇ。自分の部屋で寝ているから、それを食べたら見に行ってあげてねぇ」

「はい……」

 寝ているのに起こしたら悪いなあ、と思いながら緑茶をすすっていると、柱時計がぼーんぼーんと鳴った。おばあちゃんが時計を見て心配そうな顔になる。