柿崎先生に入部届を提出し、晴れて料理部の一員となった私を、菓子先輩はとても喜んでくれた。このまま部員が集まらなかったら、廃部になるところだったらしい。

「昔はとっても活気のある部活だったんだけど。ここ数年でめっきり部員も減ってしまって、三年生は私ひとり。去年は新入部員が誰もいなかったの」

「放課後においしいものが食べられるなら、みんな喜んで入りそうな気がするんですけど」

「やっぱり、自分で作るのが大変だからじゃないかしら。それにほら、和菓子や甘いものが食べたい人は、茶道部に入ってしまうし」

「ああ、なるほど~……」

 料理部っていかにも女子高らしい部活だと思うけれど、最近はそういうのも流行らないのかもしれない。

「私は食いしん坊なので、自分で作る手間はかかっても、おいしいごはんが食べられたほうが嬉しいです」

 料理は家でたまにするくらいだけど、嫌いじゃない。作れるのはカレーとか肉じゃがとか、簡単なのをお母さんに教わったくらいだから、これからレパートリーを増やしていけたらいいな。

「こむぎちゃん……お嫁さんにしたいわあ」

「何言ってるんですか……」

 この先輩はほんわか村の住人だから、他人の良いところしか見えないのかもしれない。

「私なんてダメですよ。可愛げがないし、モテたことすらないですもん」

「こむぎちゃんは可愛いわ。簡単に懐かないところも猫みたいでいいのよね~」

 今は菓子先輩に対して、わりと、いやけっこう懐いているんだけど、そう言うのも照れくさくて黙っていた。

「じゃあ記念すべき第一回目の部活は、歓迎会にしましょうか。私のお気に入りのお店に連れて行ってあげる」

「え、私あんまりお小遣い持ってないんですけど……」

「大丈夫、リーズナブルなお店だし、ちょっとばかりコネがあるの」