次の日。夕陽に赤くそまった田んぼ道を、私は歩いていた。

「うわあ、夕焼けきれい……」

 山の稜線のむこうに、赤く熟れたトマトみたいな太陽が沈むのが見える。菓子先輩は毎日、こんな景色を見ているんだな。

 お見舞いに行きたい、と言うと柿崎先生は快く菓子先輩の住所を教えてくれた。その住所を見たときになんだか嫌な予感がしたのだけど、菓子先輩の家は桃園高校からバスを乗り継いで一時間以上走ったところにあった。

 バスの窓から見る景色はどんどん田んぼや畑ばかりになっていくし、山に近付いて行ったときはまさか登山をするはめになるんじゃ、と心配になった。結果、山のふもとで降ろされたけれど、もうこれはほとんど山と言ってもいいんじゃないか。

 バスの運転手さんに住所を見せて尋ねたら「あの道をま~っすぐ行ったら、でっけえ家が見えっからあ」と言われたのでもう十分も歩き続けているのだが、民家の建ち並ぶ通りからは外れて行くし、田んぼの中に大きい家なんて見えないし、だんだん疲れてきた。

 田んぼ道をこんなに歩いて、一時間以上もバスに乗って、菓子先輩はこんなことを三年間も繰り返していたのか。心底すごいと思う。

「あら~、お帰りなさい」

 柴犬を連れたおばさんが和やかに挨拶をしてくれる。地元の高校生だと思われたのだろうか。知らない人にもお帰りって言ってもらえるなんて、ちょっといいな。

「こ、こんにちは。あの、学校の先輩の家を探しているんです」