「もしかして、そのときも今回も、お母さんが亡くなった時期だから……?」

「ああ。これは想像だけど、菓子ちゃんは命日が近付くと余計症状がひどくなるんだと思う。きっと飲み物も飲めなくなっていたんじゃないかな」

「そんな……」

 もし菓子先輩が部活に来ていてくれたなら、倒れる前に気付けたかもしれないのに。
 いや、そんなのは言い訳だ。私がずっと菓子先輩のそばにいたなら。連絡をとっていたなら。今更何を言っても遅いけれど、こうなる前に菓子先輩を助けたかった。

「こむぎちゃん、後悔しているのは僕も同じだよ」

 浅木先生に言われてはっとする。うつむいていた顔をあげると、浅木先生は泣きたいのを我慢しているような表情をしていた。きっと、私と同じ。

「菓子ちゃんの事情を知ってから、菓子ちゃんがお店に来る日は無理にでも何か食べさせるようにしていた。味がすごく濃ければどうだろう、逆に淡泊だったらどうだろう、といろいろ工夫してみたけれど、僕では菓子ちゃんは治せなかった。今だってほら、菓子ちゃんがお店に来てくれなければ、僕からは何もできないんだ」

「そんなことないです。浅木先生は……ずっと助けてくれていたのに」

 今だって、妊娠している奥さんのことだって気がかりなはずなのに、こうして私を助けてくれている。浅木先生には感謝してもしきれないよ。