「僕に会わせるということは、何かあったときに菓子ちゃんの事情が僕から伝わるかもしれないということ。それを分かっていてこむぎちゃんを連れてきたということは、菓子ちゃん自身もそれを望んでいたのだと思う。こむぎちゃんは菓子ちゃんにとって、特別な後輩だからね」

 特別な後輩。その言葉に胸があまずっぱく痛む。

「私、ずっと菓子先輩の特別になりたかったんです。自分が菓子先輩を想うのと同じくらい、菓子先輩も自分を想ってくれたらいいのにって、ずっと思っていました。卒業して忘れられるのがさびしかった。菓子先輩の気持ちが分からなくて、すねたり、泣いたり、いろいろしました。でも今なら分かります。そんなの最初から無理だったんだって」

 浅木先生は優しい顔で私の告白をじっと聞いてくれている。その表情はやっぱり、菓子先輩にちょっと似ていた。

「だって私はこんなに菓子先輩のことが好きだから。いくら菓子先輩が私のことを特別に思ってくれていても、ぜったい私のほうが大好きだから。だから同じくらい想って欲しいなんて無理だったんです」

 菓子先輩を失う前に、気付けて良かった。菓子先輩が私をどう思っていたとしても、関係ない。私がこの気持ちだけ持っていればいい。その想いがきっと、私に勇気と強さをくれるから。

「なんだか、愛の告白みたいだね。菓子ちゃんは本当に幸せものだ」

 愛の告白。ある意味そうかもしれない。恋愛じゃないけれど、菓子先輩は私にとって一番大切な人だ。今気付いたけれど、菓子先輩と浅木先生が仲良くしていても嫉妬しなかったのは、私が浅木先生より菓子先輩のことを好きだったからなんだ。

 この先私に新しく友達ができても、好きな人や恋人ができても、きっと菓子先輩のことはずっと一番好きだろうな。