「凛々子さん、どうしたの? 大丈夫?」
私は床に落ちている新聞に腕を伸ばし、手元に手繰り寄せた。
そこに書かれている記事は……過去は……何ひとつ変わっていなかった。その事実が、現実感を伴って心に重くのしかかってくる。
みんなは『修学旅行に行かない』と確かに約束してくれた。
それなのに、なぜ?
どんなに足掻こうと、あの日、あの時間、あの場所で、みんなが死んでしまう運命は変えられないってこと?
みんなを助けられる方法はないの?
「絶対に死なないって言ったじゃん……」
溢れた涙が新聞の上に滴り落ちて、弾けた。
「ねぇ、凛々子さん。もしかして、亡くなったみんなの姿が見えるの?」
先生は私の背中に手を置き、深刻そうに眉をひそめた。
私が見ているものは、“亡くなった”みんなじゃない。
“生きている”みんなだよ。
そう言い返したいのをこらえ、新聞記事を見つめたまま、「はい」とうなずいた。