「今の聞いた? 鹿公園だってさ!」
「ぎゃははっ、それはやばい! マジウケる」
「なるほど。“奈良”にさよう“なら”ってわけね」
「ちょっと、委員長。そんなドヤ顔でつまんないオヤジギャグ言うのやめてー」
「本当! ちょーつまんねぇ!」
つまらないと言ったわりに、沙恵ちゃんと和也くんは喉の奥が見えるくらい大きな口を開けて笑っている。
智ちゃんも自分で言ったギャグが相当可笑しかったのか、お腹を抱えて笑っている。
すぐ近くでしているはずのみんなの笑い声が、ひどく遠く聞こえた。
「ねぇ、リリ。なんでみんな笑ってるの?」
唯人はきょとんとした顔で私を見上げた。
……覚えてる。
このやりとり、覚えてる。
このとき私も、みんなと一緒になって大笑いした。
笑いながら唯人に、「そうだね。私も唯人と一緒に、鹿さんにおせんべいあげたいな」と言った。