動揺を胸の底に沈めながら、教室の中に視線を戻した。
窓際の席に座っている金髪の男の子。窓から差し込む柔らかな日差しが、その整った横顔を照らしている。
「唯人……」
唇をきつく噛み締め、溢れ出そうになる涙をこらえた。
泣いてる場合じゃない。
唯人に……みんなに……
昨日のことを覚えているかどうか確認しなきゃ。
私は唯人の方に向かって歩き出した。私が近づくと、唯人は冊子に落としていた目を上げた。
「おっ、リリ。どうしたの、そんな怖い顔して」
「ねぇ、唯人。昨日のこと覚えて……」
言いかけて固まった。唯人が机の上に開いているのは、修学旅行のしおりだった。
私は小刻みに震える指で冊子を指した。
「それって……」
「あぁ、これな。自由行動の時間、どこに行こうか考えてたんだ。修学旅行、本当に楽しみだよな。早く来週になってくれないかなぁ」
唯人は歌うように言った。