途方に暮れている私の脳裏に、ふと、ひとつの可能性がよぎった。


私は弾かれたように顔を上げた。


みんなに『修学旅行に行かないで』と伝えたことにより、未来が変わっていないか。


もし私の言葉で過去が変わり、誰も修学旅行に行っていなければ——


可能性というより、望みだった。


私は教室を飛び出し、新校舎まで全速力で走った。


玄関を入り、肩で息をしながら、職員呼び出しのベルを五、六回立て続けに鳴らした。職員室の方から、松下先生が慌てた顔で走ってきた。


「どうしたの、凛々子さん?」

「3年1組のみんなは?」

「はい?」

「みんなはどこですか!」


息を切らしながら叫んだ。


額から流れ落ちてくる汗が目にしみるけれど、私はまばたきせずにまっすぐ先生を見上げた。先生の瞳が、戸惑うように揺れた。


「ごめんなさい。言ってる意味がよくわからないんだけど……」