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何秒か完全な静寂が続いたあと、蝉の声がゆっくりと耳に戻ってきた。


「みんな!」


私は辺りを見渡した。潤んだ視界の先には、空っぽの席が並んでいる。みんな、いなくなってる。


自分の身体に視線を走らせた。制服を着ていない。髪が腰まである。


未来に、戻ってきてる……


教室から一歩も外に出てないのに、なんで?


私は教室を飛び出し、踵を返して中に駆け込んだ。


チャイムは聞こえてこない。時計も光らない。


「お願い! 時間を戻して!」


泣き叫びながら、何度も何度も教室を出入りした。


しかし、無反応だった。黒板の上の壁掛け時計は、沈黙と無表情を保ったまま、じっと私を見下ろしている。


教室から出なければ、未来に戻らないんじゃないの?


チャイムが鳴ったことと関係あるの?


私は教室のドアに額を押し付けた。肌に触れる窓ガラスの感触が、氷のように冷たく感じた。


あれだけ泣いたのに、またしても涙が込み上げてくる。


「なんで……なんで……」


扉に跳ね返って、同じ言葉が何度も繰り返し耳に響く。