十二年前のあの日、私は一瞬にしてすべてを失った。
初めてできた恋人も、
何でも話せる親友も、
家族のように温かい仲間も、
笑顔の絶えない学校生活も、
キラキラと輝く青春も。
全部、全部、失った。
お父さんの仕事の都合で、小さい頃から毎年のように転校を繰り返してきた。
小学四年生のときまでは、忘れられたくない一心で、転校してからもクラスメイトたちに手紙を書いた。
最初のうちは返事が来るのだけれど、二、三通やりとりが続くと、すぐ返ってこなくなってしまう。
頑張って仲良くなっても、どうせすぐに別れがやってきて、みんな私のことなんて忘れてしまう。
私なんて、いてもいなくても同じ。どうでもいい存在なんだ。
それを子供ながらに察してしまい、どんどん引っ込み思案になっていった。
中学一年生の終わり頃、お父さんが勤めていた会社を辞め、実家のスーパーの経営を引き受けることになった。
春先の、まだ寒さが残る風が強い日、お父さんは、お母さんと私を連れて地元の梢田町に戻ってきた。ひしめき合う高層ビルや道を埋め尽くす人混みとは無縁の、田んぼと畑ばかりの田舎町だった。