キーンコーンカーンコーン……
教室の中に足を踏み込んだ瞬間、まるで待っていたかのようにチャイムが鳴り始めた。頭上から光のシャワーが降り注ぐ。
はっと顔を上げると、壁掛け時計が白く輝いていた。
その光は徐々に明るさを増していき、やがて私の全身を飲み込んだ。まぶしさのあまり、反射的に腕で目を覆う。
身体が宙に浮き、ぐるっと一回転するようなめまいがした。耳の底に、がやがやした話し声が近づいてくる。
光がおさまったのを感じ、私は目を覆っていた腕を下ろした。
ついさっきまで1時を指していた針が、12時を指していた。止まっていた秒針がカチカチと動いている。
「まさか……」
後ろを振り向くと、そこにはふたたび十二年前の教室が広がっていた。みんなが賑やかにお喋りしている。
窓際に立っている男の子と、目が合った。彼はこちらに向かって手を上げ、にっこりと屈託なく笑った。
「リリ、今日はこっちでお弁当食べよーっ!」
唯人だった。
涙が突き上げ、視界が滲んだ。