「リリ、どうしたの?」
唯人がこちらに駆け寄ってきた。私は大きく息を吸い、その場にいる全員に聞こえるように、あのね、と言った。
「私、みんなとお別れしないといけないみたい」
「えっ……?」
「お別れって何?」
「どういうこと?」
お別れという言葉に、他のみんなも私の周りにざわざわと集まり出した。
これでようやく、みんなにちゃんと言える。あのとき言えなかった『さようなら』を。
「私ね、遠くに引っ越すの」
「引っ越す……?」
唯人の顔から、すっと笑顔が消えた。
「何、言ってるの? 冗談だよね?」
「冗談じゃないよ」
私は拳をぎゅっと握り締めた。
「昼休みが終わったら、すぐに行かないといけないの。だから昼休みが終わる前に、みんなにちゃんとお別れを言いたくて」