「……今、欲しい」
「えっ?」
「どうしても今がいいの。昼休みが終わる前に……ほしいの」
「俺はそれでも別に構わないけど、リリはいいの? みんなの前で渡したら、リリが恥ずかしくて嫌がるかなって思ったんだけど……」
「いいの」
私は唯人の両手を握り、彼の目をまっすぐ見上げながら、もう一度言った。
「昼休みが終わる前に、ほしいの」
声が震えた。泣き出しそうになった。それをごまかそうとして、私は笑った。
「だって唯人のプレゼントが気になって、絶対午後の授業に集中できないもん。ねっ? だからお願い」
「ははっ、可愛いこと言ってくれるね。わかった。じゃあ……」
唯人は席に戻っていき、十二年前にくれたのとまったく同じ紙袋を持ってきた。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
私は紙袋を受け取り、中から小さな箱を取り出した。