「――リリ……リリってば」


とてつもなく懐かしい声がして、はっと顔を上げた。


そのとき、まったく唐突に、思いがけないものが目に飛び込んできた。


目の前に立っている学ラン姿の少年。


アーモンド型の綺麗な目、細く尖った形のいい鼻、金色の髪……


それが唯人(ゆいと)だと認識するのに、少し時間がかかった。


見間違いだと思った。私はごしごしと目をこすり、深呼吸し、もう一度正面から彼を見上げた。


「どうしたの、リリ? 俺の顔に何かついてる?」


どくん、と心臓が跳ね上がった。


やっぱり唯人だ。


「うそ……唯人……どうして唯人がここに……」


自分がどこにいるのかわからなくなった。パニックを通り越して、頭の中がからっぽになる。


私は彼の完璧に整った顔を凝視したまま、しばらくまばたきをするのも忘れてしまっていた。状況がまったく呑み込めない。