やがて信広さんの運転する車は、私の家の玄関前に停車した。
「わざわざ送ってくださってありがとうございました」
「いえいえ」
私はドアを開けて車から降りた。運転席の窓が開き、信広さんが顔を出した。
「人混み、疲れたでしょ。今夜はゆっくり休んでくださいね」
「ありがとうございます。今日は信広さんに会えてよかったです。すごく楽しかったです」
信広さんは私をまっすぐ見上げ、目を細めて微笑み、俺もです、と言った。
「俺も凛々子さんに会えてよかったです。楽しい時間をありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」
「それではおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
私は玄関の前に立ち、信広さんと先生に向かって頭を下げた。ふたりはにこっと会釈を返した。車が静かに発進する。