最後に打ち上げられた三尺玉の花火が、きらきら光りながら闇の中を流れ落ちていった。


白煙に覆われた空を眺めて花火の余韻に浸っていると、松下先生が帰ってきた。


「ふたりとも、ごめん。中学のときの友達に会ったら、昔話に花が咲いちゃって」

「いいよ、いいよ。友達に会えてよかったね」

「ふたりはどうだった? 今年のこずえだ祭り、楽しめた?」


私と信広さんはちらっと視線を交わし、


「——うん、とっても」
「——はい、とっても」


大きくうなずいた。先生はほっとしたように眉を開き、よかった、よかった、とつぶやいた。


「せっかくだし、ふたりの浴衣姿の写真、撮ってもいい?」


私たちが答える前に、先生は鞄からスマホを取り出し、カメラをこちらに向けた。


「ふたりとも、もっと寄って」


信広さんは私と彼の間に置いてあったビニール袋をどかすと、座ったまま身体を寄せてきた。


肩と肩が、わずかに触れた。


たったそれだけのことで、心臓が早鐘を打った。激しく鼓動を刻む心音が、相手の耳に届いてしまいそうな気がした。