それから私たちは、スイーツの話で盛り上がった。
信広さんの住んでいるアパートの近くに美味しいケーキ屋さんがあって、ほぼ毎日テイクアウトしているらしい。
一番のお気に入りは生クリームたっぷりのショートケーキで、週に必ず一度は食べるんだとか。
本当に美味しいから、いつか私もそのケーキ屋さんに連れていきたい。そう信広さんは言った。
単なる社交辞令に過ぎないのに、どうしてか、それが実現されるような予感がした。
彼とテーブルに向かい合って座り、美味しいね、これなら毎日でも食べられそう、と話しながらショートケーキを口に運ぶ光景は、容易に想像できた。
同時に、その指輪が何なのか気になった。
だけど聞かなかった。なんとなく聞いてはいけない気がした。