私は引き戸に手をかけ、ひと息に開け放った。


窓から夏の日差しが燦々と降り注いでいて、教室の中を明るく照らしている。


机や教卓はそのまま置かれていて、ここから見える景色は、当時と同じだった。


目に映るものすべてに思い出が刻み込まれていて、あぁ、あの日こんなことがあったな、こんな会話をしたな、と些細なことまでが、ひとつひとつ脳裏に蘇ってくる。


教室を見渡していた視線が、ふと、黒板の上の壁掛け時計に止まった。秒針は動いていなくて、時計の針が1時ぴったりを指したまま止まっている。


止まっている時計を見て、まるで自分自身みたいだと思った。


私の中の時計は、十二年前のあの日を境に、とっくに時を刻むことをやめているのに、現実の時間は無情に流れていく。


あの頃に戻りたい……


どんなにそう強く願っても、時間は前に進むばかりで、私をひとり置き去りにする。