「あら、明美ちゃんじゃないの」


前方から二人組の女性が近づいてきた。


先生は弾かれたようにベンチから立ち上がり、彼女たちの方へ小走りに駆けていった。


「ふたりとも久しぶり。元気にしてた?」


三人は輪になって話し始めた。ここからだと喋っている内容は聞き取れないけど、肩を叩き合って笑っている様子からして、三人の仲がかなりいいことは窺える。


いくつか言葉を交わしてから、先生は急ぎ足で私のところへ戻ってきた。


「ごめんね、凛々子さん。私、挨拶してきたい人がいるんだけど、行ってきてもいいかしら? 古い友達なんだけど、今日屋台を出してるみたいで」

「えぇ、それは構いませんけど……」

「ありがとう。ノブに、たこやきは戻ってきてからいただく、って伝えておいてくれる?」

「わかりました」

「ちょっと行ってくるわね」


言い終わらないうちに、先生はくるりと背中を向け、さきほどの女性たちと一緒に、屋台が並んでいる芝生広場の方へと歩いていった。