「せっかくだし、凛々子さんも私たちと一緒に花火見ない?」
「いいんですか?」
「えぇ、もちろんよ」
「じゃあ俺、屋台で何か買ってきますよ。何がいいですか?」
「私はたこやきをお願い」
先生がすかさず答えた。
「あっ、あと冷たいお茶も」
「わかった。母さんはたこやきとお茶ね。凛々子さんは?」
「私の分は大丈夫です。お気になさらず」
「遠慮しないでください」
「でも……」
「クッキーのお礼です。何でも好きなものを言ってください」
「じゃあお言葉に甘えて、私もたこやきとお茶にしようかな」
「わかりました。すぐに買ってきますんで、少し待っていてください」
信広さんは踵を返し、早足で屋台の方へ戻っていった。
「あの子ったら、めずらしく張り切っちゃって。普段はあんなに喋らないのよ」
「えっ、そうなんですか?」
「そうよ。よっぽど凛々子ちゃんのことが気に入ったんだと思うわ」
先生は鈴を転がすような澄んだ笑い声を上げた。その言葉に対してどう返したらいいのかわからなかったので、私も彼女に合わせて笑った。