「まぁ、綺麗！」

「本当？」

「本当よ、本当。ひとりで歩いてたら、色んな男の人にナンパされちゃうんじゃないかしら」

「もうお母さんったら」


私が肩を揺らして笑うと、お母さんも声を立てて笑った。


「凛々子が元気になってくれたみたいでよかった。最初、旧校舎を見に行ったっていう話を聞いたとき、凛々子が過去のことを思い出して、余計にふさぎ込んじゃうんじゃないかって、すごく心配してたの。だけど逆だったわね。３年１組のみんなが凛々子に元気を与えてくれているのかしら」

「うん、そうかもしれないね」


タイムリープのことは、両親に話していない。話したらきっとふたりを不安にさせてしまうから、このまま黙っておくことにした。


リビングの時計を見上げると、１７時３０分だった。


「じゃあ私、そろそろ行ってくるね」

「本当にひとりで大丈夫？　やっぱりお母さんも一緒に行こうか？」

「ううん、大丈夫。今日はどうしてもひとりで行きたいの」

「わかった。それじゃあ、気をつけて行ってきてね」

「うん、いってきます」